気づき
カウンセリングは気づきの場面を提供するところである。人が、自分自身に気づくことには、無意識であるがゆえの困難さがある。カウンセラーはその部分にはあえて踏み込まない。
ところが、対話を重ねて行く中で、カウンセリングが停滞したようにみえる時、一瞬の沈黙が訪れる。その沈黙を破るような話を語り出した瞬間、一挙にカウンセリングが進展することがあるのだ。
そのときに何が起こっているかと言うと、無意識に蓋をしてあったものが一挙に取り払われるのである。
「そうか、自分はそういうことで悩んでいたのだな」。胸のつかえが取れた瞬間である。
心の中にもやもやしていたもの、自分でも分からなかった悩み、葛藤が姿を表わす。それを語った瞬間それらは雲散霧消し、今までとは全く違った自分が現われてくるのである。
朝日が山の稜線できらりと光るような光景が、カウンセリングルームに現われる。次の瞬間、数秒前までの自分とは違った自分が現出するのである。
この進歩、この感動こそが向上心の証明そのものである。