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2018年2月21日 (水)

ストーブ

彼は、朝も暗いうちから教室で一人せわしく働いていた。教室のダルマストーブを焚くために、彼は誰よりも早くから登校してくるのだった。彼の焚き方には作法がある。まず新聞紙をひねったものをたくさん用意し、その中の適当な一片にマッチで火を着けてストーブの中に大事そうに入れる。すでに用意の紙片を次々放り込むと火はまたたく間に大きくなり、それと同時に彼の顔もオレンジ色に染まりはじめるのだった。次に、薄い木の皮を入れたりしながら、、彼が手にするものは次第に大きな木片に代わっていった。「よし」と彼は誰にいうともなく呟き、仕上げとしてコークスの黒い塊を慎重に、かつ慈しむようにストーブの投入口にくべていくのだった。まるで幼児に離乳食を与えるようだと思った。級友が教室に集合するころには、ストーブは皆で囲まれていたが、彼は感謝されるでもなく、要求するでもないのに、彼の顔は満足感に満ち溢れていた。春になれば、早朝に彼の姿はなく、ストーブも用務員の手で取り片づけられ、教室の外は満開の桜の季節を迎えるのだった。

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