話に乗る
人から「自分の話に乗ってほしい」と言われたら、聞き手が何やかやと言うことはできない。「自分の車に乗ってほしい」と言われたも同然だ。こちらが運転することも、指示することもできないようにである。ほとんど拉致されたに等しい。これは怖い話だ。その恐怖から聞き手が逃れるには、聞き手の意見やアドバイス、ないしは否定語を使うしかない。自分だったら、とか、こうしたら、とか言うことになる。最後にじっくり話を聞いたあとで、「でも・・」と言えば相手の話に拉致されずに済む。この瞬間、運転は語り手から聞き手によって乗っ取られている。私たちは無意識のうちに乗っ取られたり、乗っ取っているのかもしれない。この方が余程怖い話だ。