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週に2回は、柳橋の料亭で作ってもらう弁当を取りに行くのが私の仕事だった。小暗い柳橋の路地を歩くと、どこからともなく三味線の爪弾きが聞こえる。立ち止まりそうな足を急がせる。柳橋は、向島、新橋と並ぶ三大料亭街の一つ。田中角栄が足繁く通った料亭の黒塀の横を、漆塗りの弁当箱を風呂敷包ごと抱えて職場に運ぶ。父親と食べる柳橋の味が料理の原点かもしれない。