遠景
遠い景色は一様にフラットである。5キロメートルさきの山も10キロメートルさきの山もほぼ一緒だ。ところが近くにあるもみじの木の5メートルさきの湖とは大きな隔たりがあるから、湖に落ちないようにしなければなるまい。同じことは過去の記憶でも起こる。3日前の記憶とさっき起きたこととは大きな隔たりがあるが、大昔の記憶は今でもハッキリと思い出す。それどころか生きている。人は「そんなことを持ち出すな」と言うが、子供時代のことは今でも私の人生そのものである。そんなことも無意識になっていて、怖いひととは話すことができない自分がいる。