バリア
学校のクラスには一人くらい穎脱した者もいる。家常茶飯には溶け合わず、自らの周辺に目には見えないバリアを張り巡らしている。彼の感情を揣摩する試みはすべて失敗し、それで彼に口をきくものは殆ど居なくなった。それでいながら世故には長けており、たまさか相談を持ちかけさえすれば忽ち東京のさる女子校とのクリスマス・パーティの企図をぶち上げたりする。実行に移した彼は水を得た魚の如く女子校生たちのアイドルに変身する。その翌日、いつもと変わらぬバリアで身を包んだ姿を教室中央の席に置いていた。その後退学して行った彼のことを語る者はいない。