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高校時代の教師は英国仕立ての背広に身を包んだ、一分の隙きも無いハイカラ紳士だった。体躯はずんぐりしていて、顔はどことなく番頭風なところがあった。片手にいつもモンブランの万年筆を弄ばせながら対応し、時折モンブランを散らかった机上に向かって乱暴に放るのだったが、彼がその万年筆を置き忘れたという話はついぞ聞いた試しがなかった。あの風格はいったいどこで養われたものなのか。