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ほんらい、子どもには何の力も具わっていない。家族の他の子どもが愉しげに遊山に連れていかれるのを、罰に留守番をしなければならない子どもの、取り残された心細さ、口惜しさ、淋しさの限りが彼の身を慄わせる。虚ろな目に映るのは古色蒼然たる書棚に並ぶ世界文学全集の截金細工風の文字。それが生涯の友になったのかもしれない。