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友が貴住する広大な寺は下町の一角をほとんど占めていた。長い築地塀が延々と続いた先には見上げるばかりの寺院があった。むかしその右手に倒れんばかりの六角堂の中にかれが住んでいたのだった。その内部の床はボールを置くとコロコロと壁に向かって驚くような速さで転がっていった。目の前に果てしなく続く豪華な建物を見るたびに、焼け跡かと思われるほどの墓地が広がっていた。それが今でも二重映しのようにみえてくる。